バドミントン 本質講座

その「気づき」、言葉にできますか?

7つの習慣から『悪い』の定義まで、バドミントンを通じて物事の本質を問う

1. 「気づき」とは何か?主体的な学びの第一歩

この日の教室は、選手の輝かしい大会報告から始まりました。そんな中、コーチが提示したのが、「『気づき』って何でしょう?」という根源的な問いです。この問いが、今回のテーマを貫きます。

学びから気づきへのプロセス 学び (情報) 言語化・抽象化 気づき
情報を自分の言葉で再定義したとき、それは「気づき」に変わる。

大谷風子さん

人から聞いたとしてもそれを自分の言葉で何らかしらにこう落とし込んでなるほどって思えたらそれが気づきなるんじゃないかなって。

中島コーチ

いわゆる言語化っていうのが重要だと思った…概念にするっていうですかね。抽象化する。これって一体どういうことっていう風に1段こう上に上げてるようなことを気づきって言ってるんじゃないかな。

単に情報を受け取る「学び」から一歩進んで、物事の本質を捉え、自分の言葉で再定義する。その主体的なプロセスこそが「気づき」であり、真の成長の始まりなのです。

Key Takeaway

「気づき」とは、情報を抽象化し、自分の言葉で言語化する主体的な営みである。「これは一体どういうことか?」と一段上の概念で捉え直したとき、それは単なる「学び」を超えた本物の「気づき」に昇華する。

2. 信頼される人の習慣と、成長を生む時間の使い方

「気づき」の議論から派生し、話題は「信頼できる人とは?」そして「成長するための時間の使い方」へと移りました。これらは根底で深く繋がっています。

信頼の根源は「相手への関心」

コーチは「半年以上前に話したことの状況を聞いてくれる人は信用できる」と問いかけました。これは、相手との会話をただの情報としてではなく、その人の物語として記憶し、関心を持ち続けている証拠です。

鈴木さん

(ある先生は)「怪我どうだった?」って。…先生は確かに、「あ、この先生は本当考えてくれてんだろうな」と思いました。

成長は「重要だが緊急でない」領域に眠る

『7つの習慣』における時間管理のマトリックスを参考に、コーチは「緊急かつ重要なことばっかりやると成長しないんじゃないの?」と鋭く指摘します。

時間管理のマトリックス 緊急 緊急でない 重要 重要でない 締切、クレーム対応 (必須領域) 成長領域 準備、計画、学習 基礎練習、ケア 多くの電話、無意味な会議 (錯覚領域) 暇つぶし、だらだらSNS (浪費領域)
長期的な成長は、青い「成長領域」への投資で決まる。

基礎練習や将来のための学習といった「重要だが緊急ではない」活動にどれだけ時間を使えるかが、長期的な成長の鍵を握るのです。

3. スポーツにおける「悪い」の正体と指導の倫理

「性格が悪い人が強い」という俗説をきっかけに、「『悪い』とは一体何か?」という哲学的な問いへと発展しました。

善悪の定義 悪い ルール違反 集団での攻撃 悪くない 相手を騙すプレー (ルールの範囲内)
「悪い」の定義は人それぞれ。自分なりの軸を持つことが重要。

中島コーチ

(相手を騙すプレーは)悪いって言ったら例えばルール違反をします。これ悪いに該当すると思うんですけど、ルールの範囲外でやってることをやってやってる人に悪いか全然悪くないし、むしろ正々堂々だよね。

鈴木選手

集団で他人を巻き込み、自分一人でリスクを負わずに攻撃してくる人が「悪い」。

議論は体罰や罵倒による指導の是非にまで及び、安易に結論を出すのではなく、物事を多角的に捉え、自分なりの軸を持つことの重要性が示唆されました。

4. 意識がプレーを変える—選手の躍進に学ぶ

どんな練習も、最終的には個人のマインドセットがパフォーマンスを大きく左右します。この日は、なっち選手からの素晴らしい成功体験が共有されました。

マインドセットの転換 😟 結果に囚われる 「勝たなきゃ…」 意識改革 😊 行動目標に集中 「練習通りやろう!」
勝ち負けではなく「やること」に集中した時、最高の力が出る。

なっち選手

(以前は勝ちたくなっていたが)もう父さんからもそうだけど、もう練習してことを出すとか内容だから。もう結果はどうだってもその目的が達成できればいいよって言われて。

このエピソードは、目先の勝ち負けに囚われるのではなく、設定した行動目標を達成できたかどうかに焦点を当てるマインドセットの転換が、最高のパフォーマンスを引き出す鍵となることを証明してくれました。

5. コーチング的5つの学び

今回の教室から得られた、バドミントンと人生を豊かにする5つの本質的な学びを紹介します。

1. 「気づき」の正体は抽象化と言語化

ただ情報を得るだけでなく、「これはつまりどういうことか?」と問い直し、自分の言葉で表現する。その主体的なプロセスが学びを血肉に変える。

2. 成長は「重要だが緊急でない」領域に眠る

基礎練習、ケア、学習など、すぐに結果が出なくても重要なことに時間を投資できるかが、長期的な成長を左右する。

3. 自分なりの「善悪の軸」を持つ

物事の評価は単純ではない。「悪い」とは何かを自ら定義し、行動の軸を持つことが、ブレない人間性を育む。

4. 結果ではなく「行動目標」に集中する

コントロールできない結果ではなく、自分でコントロール可能な行動目標の達成に集中する。その先にこそ、自信と良い結果が待っている。

5. 一人では何もできない (One for all, All for one)

練習相手、指導者、仲間、対戦相手がいて初めてスポーツは成立する。感謝を忘れず、互いを高め合う関係性が不可欠である。

6. アウトプット習慣チェックリスト

学びを行動に移してこそ意味があります。インプットした知識をアウトプットし、自分のものにするための具体的なアクションリストです。

7. 今日の「問い」を明日の一歩へ

「気づきとは?」「信頼とは?」「悪いとは?」「成長とは?」——。今回の教室は、答えのない問いの連続でした。しかし、これらの問いと向き合い、自分なりの答えを探し続けること自体が、私たちを深く、強くしてくれます。

中島コーチ

ベスト8に入ろうと思ったら、優勝を狙った方がいいよ。優勝できる力をつけたら誰と当たっても関係ないからさ。…ダントツでも勝つぐらいやった方がいいです。

目先の勝利に惑わされず、本質的な力をつける。そのための探求は続きます。