勝利への新視点講座

君の世界は、君だけのもの。

「環世界」理論から学ぶ、コートと人生の真実

1. なぜ?ダブルスで「わかり合えない」理由

「なんで今、前に詰めたんだ!」「どうしてあのコースを打ったのか理解できない」。ダブルスのパートナーや、対戦相手に対して、そんな風に感じたことはありませんか?

私たちは、誰もが同じコートを、同じように客観的に見ていると信じがちです。しかし、もしその前提自体が「間違い」だとしたら?

この記事では、生物学者ユクスキュルが提唱した「環世界(かんせかい)」という概念をヒントに、このバドミントンにおける根源的な問いに迫ります。この考え方は、あなたのプレー、そして人間関係を劇的に変える力を持っています。

2.「環世界」とは?マダニが教えてくれる真実

ユクスキュルは、すべての生き物が自分だけの独自の世界(環世界)を生きていると考えました。その象徴が「マダニ」です。

目も見えず、耳も聞こえないマダニ。彼女の世界は、たった3つの信号だけで成り立っています。

マダニの環世界 鳥のさえずり 太陽の光 マダニ マダニの環世界 ① 酪酸の匂い (落下せよ!) ② 毛の感触 (進め!) ③ 温度 (吸血せよ!)
マダニの世界は3つの信号で完璧に閉じている。

ユクスキュルの言葉

確実さは、豊かさよりも重要である。

これはバドミントンも同じです。試合のプレッシャーの中で、無数の選択肢に迷うより、「この場面ではこのショット」という確実な判断ができる方が、勝利に繋がるのです。

3. 人間の環世界:バドミントンを豊かにする力

では、私たち人間の環世界はどうでしょうか?他の動物にはない、3つの際立った特徴があります。

1. 多様な意味を創り出せる

同じ「シャトル」でも、「ただの練習球」と見るか、「勝利を決める運命の一打」と見るかで、その価値は全く変わります。一つのプレーにどれだけ多様な意味を見出せるかが、あなたの成長の鍵です。

2. 環世界を拡張できる

トップ選手の動画分析、戦術書、コーチからのアドバイス。これらはすべて、あなたの身体的な限界を超え、プレーの環世界を無限に広げるためのツールです。

3. 環世界を移動し、共有できる

これが最も重要です。パートナーの環世界、相手の環世界に想像力を働かせること。これができれば、ダブルスの連携も、シングルスの駆け引きも、全く新しいレベルに到達します。

環世界の共有 A 「前に詰めるべき!」 B 「ここはステイだ…」 対話による共有
異なる環世界。しかし対話によって、互いの世界を理解し、共有できる。

4. まとめ:「わかりあえない」からこそ豊かになる

「なぜパートナーはわかってくれないんだ」という怒りは、「相手も自分と同じ世界を見ているはずだ」という思い込みから生まれます。

しかし、環世界論は教えてくれます。私たちは皆、自分だけの主観的な世界を生きているのだ、と。この視点があれば、パートナーとのズレは怒りの原因ではなく、新たな戦術を生み出す発見のチャンスに変わります。

今日の格言

"意味は初めからあるのではなく、動きの中で見出される。"

「この練習は意味がない」と決めつけるのは、自らの成長を止める行為です。苦手なフットワークも、主体的に関わることで「自分の武器」という新しい意味に変わるかもしれません。

さあ、相手の環世界を想像し、あなたのバドミントンを、もっと豊かにしませんか?