「自分の可能性を信じろ！」—この言葉は、私たちに夢と希望を与え、挑戦する勇気をくれます。多くの選手、指導者、そして親御さんが、この言葉を金科玉条のように大切にしていることでしょう。

しかし、この言葉を鵜呑みにすることで、かえって成長を妨げ、非効率な努力に時間を浪費してしまう危険性があるとしたら、あなたはどう考えますか？

「可能性を信じる」ことが、時として「何でもかんでも自分一人でやろうとする」という思考に繋がりがちです。もちろん、それによって能力が高まる側面は否定できません。しかし、そこには明確な限界が存在します。

例えば、計算が苦手な人が「計算力を高めるぞ！」と一念発起し、人生のすべてを捧げて努力したとしても、その分野の天才や現代のコンピュータの性能に追いつくことは現実的ではありません。これは、誰の目にも明らかです。

努力は尊いものです。しかし、その矛先を間違えれば、それは「無謀」な挑戦となり、貴重な時間を失うだけになりかねません。私たちは、まずその事実を冷静に受け止める必要があるのです。

ここで視点を変えて、世界最高峰の頭脳が集まる企業、Googleの例を見てみましょう。

意外に思われるかもしれませんが、Googleでは「自分一人の力で何でもできる天才」よりも、「専門家や仲間（ステークホルダー）を効果的に巻き込み、プロジェクトを成功に導く能力を持つ人材」を明確に求めていると言われています。

これは、現代の課題が複雑化し、一個人の能力だけでは解決できないことを、彼らが誰よりも理解しているからです。自分の専門外のことは、その道のプロに任せる。多様な意見を取り入れ、より良いアウトプットを創出する。これが、世界的大企業が採用する、極めて合理的でパワフルな戦略なのです。

つまり、「身の程を知る」とは、決してネガティブな言葉ではありません。それは、自分の能力の限界を正確に把握し、自分にない能力を持つ他者（ステークホルダー）をリスペクトし、彼らの力を戦略的に活用するための、高度な知性なのです。

ビジネスの世界で有効なこの戦略は、バドミントンの世界でも絶大な効果を発揮します。

「努力すれば何でも上達できる」と信じ込み、がむしゃらに練習へ突き進む。これは、前述した「自分の可能性を信じる」ことの落とし穴そのものです。

そうではなく、「身の程を知る」戦略を取り入れてみましょう。それは、自分やチームを勝利へ導くための、最も賢明なアプローチです。

自分一人で抱え込まず、これらのステークホルダーを信頼し、彼らの力を最大限に活用する。これが、自己満足の努力から脱却し、真の「勝利」と「成長」を手にするための鍵なのです。