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格言:賢者は己の無知を知り、愚者は己を賢いと思い込む。学び続けるための唯一の道とは?

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静かな湖面に映る星空と山々―自己を省み、己の無知を映し出す内省の象徴
静かに自身を省みるとき、初めて自分の本当の姿と知識の限界が見えてきます。

「自分はデキる」と根拠なく信じ込む人と、「私なんてまだまだです」と謙遜する優秀な人。私たちの周りには、この両極端な人々が存在します。作家・橘玲氏の著作『バカと無知』では、この現象が鋭く分析されています。

この記事では、同書の解説を基に、なぜ能力が低い人ほど自信過剰になり、逆に優秀な人ほど自己を低く評価するのか、そのメカニズムを解き明かします。そして最も重要な点として、成長し続けるために不可欠な「無知の知」、つまり「自分は知らない」と自覚することの価値について探求します。

なぜ「バカ」は自分を過大評価するのか? ―生存本能の罠

人が自分を大きく見せる行動は、実は原始時代にまで遡る生存戦略でした。当時の人類は150〜200人程度の小規模な集団で生活しており、群れから追い出されることは「死」を意味しました。

集団の中で生き残るためには、無能だと思われないことが重要です。狩りの邪魔をする、空気が読めないなど、能力が低いと見なされた者は共同体から排除されるリスクがありました。そこで、能力の低い者ほど「自分は有能だ」と虚勢を張り、自分を大きく見せることで、群れからの追放を免れようとしたのです。

「バカは群れから追い出されないために自分を大きく見せている」

この太古の生存本能が、現代においても「自分を過大評価する人々」を生み出す根源的な理由の一つとなっています。

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なぜ「優秀な人」は謙遜するのか? ―集団での生存戦略

一方で、優秀な人はなぜ「能ある鷹は爪を隠す」のでしょうか。これもまた、集団内での生存戦略です。

集団の中で過度に目立つと、同性からの嫉妬や反感を買い、足を引っ張られる危険性が高まります。特にパートナー探しの競争相手と見なされれば、社会的な攻撃の対象になりかねません。私たちの脳は、自分より優れた人を見ると「損失」を感じ、劣った人を見ると「報酬」を感じるようにできています。SNSで著名人が叩かれる現象は、この心理の現れです。

「優秀な人は目立ちすぎると叩かれるから、あえて自分を小さく見せる」

敵を作らず、円滑に事を進めるために、優秀な人ほど謙虚に振る舞い、目立たずに結果を出すという処世術を身につけているのです。

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最も厄介な問題:「バカ」は自分がバカだと気づいていない

「バカ」の最大の問題点は、自分が「バカ」であることに全く気づいていないことです。これは心理学で「ダニング=クルーガー効果」として知られています。

ある実験では、成績の悪い学生グループは、実際のテストの点数が平均12点だったにもかかわらず、自分の能力を平均68点だと自己評価しました。実に5倍以上の過大評価です。一方で、成績の良い学生は平均86点の実力がありながら、自己評価は74点と、むしろ過小評価する傾向がありました。

この「認知の歪み」により、能力の低い人ほど「自分はできる」と自信満々に振る舞い、客観的な事実や他者からのフィードバックを正しく理解できません。自分の能力不足を指摘されても、「周りが間違っている」と解釈し、考えを改めることがないのです。これこそが「バカにつける薬はない」と言われる所以です。

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希望の光:「バカ」と「無知」の決定的な違いとは?

しかし、絶望する必要はありません。ここで重要なのが「バカ」と「無知」の違いです。

  • バカ(愚か):自分が分かっていないことが、分かっていない状態。
  • 無知(知識がない):自分が分かっていないことを、分かっている状態。

この違いは決定的です。「自分は○○について知らない」と自覚している「無知」な人は、その知識を得るために行動できます。説明書を読んだり、専門家に聞いたり、勉強したりと、自らの不足を補う努力ができるのです。

「無知なことは何も悪いことではない。分からないことは学べばいいだけだ」

そもそも、この世のすべてを知り尽くしている人間など存在しません。私たちは誰もが何かの分野においては「無知」です。その事実を認められるかどうかが、成長の分かれ道となります。

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結論:成長し続けるために、私たちが持つべき唯一の態度

「バカ」の悲劇は、自分が「分かっていないことが分からない」ため、学ぶ機会そのものを失ってしまう点にあります。彼らはフィードバックを受け入れられず、孤立していきます。

では、私たちはどうすればいいのでしょうか。答えはシンプルです。

「自分は無知である」と謙虚に認め、学び続ける姿勢を持つこと。

自分が「バカ」かもしれない、という健全な疑いを常に持ち続けること。分からないことがあれば「分かりません」と正直に認め、知的好奇心を持って学び続けること。これこそが、自己を過大評価する「バカ」の罠に陥らず、真に賢く、豊かに生きるための唯一の道なのです。

最後にこの格言を胸に刻みましょう。
「バカは自分を課題評価して、優秀な人は自分を小さく見せる」。
あなたは、どちらの道を歩みますか?

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