2025年7月10日 オンライン教室レポート
格言:勝利への最短路は、敵を攻めるにあらず。己がミスを制する道にあり。

1. はじめに:勝利への「思い込み」を捨てる
バドミントンの試合で勝ちたいと願うとき、多くのプレーヤーの頭に浮かぶのは、相手コートに突き刺さる強力なスマッシュや、ネット際に沈む鋭いヘアピンではないでしょうか。つまり、「いかに厳しいショットを打つか」という攻撃的な発想です。
しかし、PHOENIX愛知では、その常識に一石を投じます。私たちは、バドミントンを『相手にミスをさせる競技』と定義しています。そして、そのための最も効果的で、かつ再現性の高い方法は、必ずしもショットの威力を高めることだけではないのです。今回のテーマは、その核心に迫る格言から始まります。
”ミスをさせることを学ぶ = ミスをさせないことを学ぶ”
この一見すると逆説的な言葉にこそ、あなたのプレーを次のレベルへと引き上げる鍵が隠されています。
2. 発想の転換:「相手にミスをさせる」の本当の意味
「相手にミスをさせる」と聞くと、相手が取れないような厳しいコースを狙ったり、速い球を打ったりするイメージが先行しがちです。もちろん、それも一つの有効な戦術です。しかし、そのアプローチには常にリスクが伴います。厳しいショットを狙えば、それだけ自分のミスも増えるからです。
攻撃のジレンマ
ハイリスク・ハイリターンな攻撃は、決まれば爽快ですが、続かなければ意味がありません。逆に、アウトやネットに阻まれれば、相手に楽なポイントを与えてしまいます。ここで重要なのは、視点を変えることです。
「相手にミスをさせる」の本質とは、相手を戦術的、精神的に追い込み、相手自身にミスを選ばせる状況を作り出すことにあります。そして、その状況を生み出す最も確実な土台が、「自分がミスをしない」ことなのです。
3. 格言の核心:なぜ「ミスをしない」ことが最強の攻撃になるのか
では、なぜ「自分がミスをしない」ことが、結果的に「相手のミスを誘う」ことに繋がるのでしょうか。そのメカニズムは、以下の3つの側面に集約されます。
1. ラリー継続によるプレッシャー
自分がミスをしなければ、ラリーは終わりません。どんなショットも粘り強く返し続けることで、「この人に決めるのは難しい」という無言のプレッシャーを相手に与え続けます。焦った相手は、より厳しいコースを狙い始め、結果として自滅的なミスを犯しやすくなります。
2. 主導権の獲得
安定した返球は、相手に「打たされている」感覚を与えます。自分のペースで攻めたい相手にとって、確実に返球され続けることは大きなストレスです。やがて相手の攻撃は単調になり、コースが甘くなったところを、こちらが初めてリスクの少ない形で攻めるチャンスが生まれます。
3. 体力と精神力の消耗戦
長いラリーは、確実に相手の体力を奪います。自分が安定したフットワークで効率良く動き、ミスなく返球を続けることで、相手だけが消耗していく構図を作り出せます。体力的な消耗は、判断力の低下やプレーの精度低下に直結し、さらなるミスを誘発します。
つまり、「ミスをしない」プレーとは、消極的な守りではありません。それは、相手の攻め気を削ぎ、焦りを誘い、最終的に相手を内側から崩壊させる、極めて戦略的な「見えざる攻撃」なのです。
4. 実践編:「ミスをしない自分」を育てるトレーニング
この「ミスをしない力」は、意識と練習によって誰でも高めることができます。今日から取り組める具体的なステップを紹介します。
- 基礎練習の再定義: ただ打つのではなく、「コートの真ん中に100回連続でクリアを返す」「ネット白帯を越さないようにヘアピンをコントロールする」など、ミスの少なさを目標にした練習を取り入れましょう。
- フットワークの徹底: ミスの一番の原因は、体勢の崩れです。シャトルへの入り方を常に意識し、無理な体勢で打つ場面を減らすフットワーク練習に時間を割きましょう。楽な体勢で打てれば、ミスは激減します。
- 「繋ぐ」ショットの価値を知る: 厳しいショットだけでなく、相手を動かすだけの深いクリアや、時間を作るためのハーフショットなど、「繋ぎの球」の重要性を理解し、練習します。すべての球をエースで決める必要はありません。
- ミスの記録と分析: 練習や試合で、自分がどんな状況で、どのようなミス(ネット、アウト、浮き球など)をしたかを記録する癖をつけましょう。自分のミスの傾向を客観的に知ることが、改善の第一歩です。
5. 結論:守りこそが、究極の攻めである
今回の格言、「”ミスをさせることを学ぶ = ミスをさせないことを学ぶ”」は、バドミントンの勝利に対する考え方を根底から変える力を持っています。
派手なウィナーショットに目を奪われるのではなく、自らのミスを一つひとつ着実に減らしていく地道な努力。それこそが、相手にとって最も嫌なプレッシャーとなり、勝利への最も確実な道を切り拓きます。
今日からあなたの練習目標に、こう加えてみませんか?
「相手を攻める前に、まず己のミスを制す。」