2025年10月11日オンライン教室レポート:『良い指導は有料』はなぜか?頑固勢を脱し、本質を見抜く思考法
DATE: 2025年10月11日
1. Opening: 成長の鍵は「ひらめき」か「思考」か?
この日のオンライン教室は、前回の「バドミントンカースト」の話から発展し、成長の本質に迫るテーマから始まりました。多くのプレイヤーが陥りがちな「ひらめき」頼りのプレー。一見、スーパープレーを生み出す魔法のように思えますが、コーチはその危険性を指摘します。
成長が「運任せ」になり、成功も失敗も再現できなくなるからです。なぜそのショットを選んだのか、他にどんな選択肢があったのか。一つ一つのプレーを言語化し、思考を巡らせることこそが、経験を確かな学びへと変えるのです。
【コーチ】 (00:12:17)
試合中にとっさのひらめきでスーパープレイが生まれたと思うかもしれないんですけども、ひらめきが良くないと思うのは成長が運任せになっちゃうこと。…仮にひらめきでうまくいったとしてね、なぜ成功したのかよくわかんないですね。ひらめいたからってになっちゃうじゃないですか。なってしまうので再現できませんよねと。
【コーチ】 (00:13:41)
なぜうまくいったのか、なぜミスしたのか。次はもっとね、何をすればいいのかいう振り返りをすることが経験を学びへと消化させ、再現性を見出す鍵となるんじゃないかなと思います。
この「思考の再現性」という視点は、今回の教室全体を貫く重要なテーマとなっていきます。
今日のKey takeaway
成長は「ひらめき」ではなく「思考」から生まれる。プレーの「なぜ」を言語化し、選択肢を比較検討し、結果を振り返る。このサイクルこそが、再現性のある強さを育む唯一の道である。
2. Deep Dive: なぜ「良い指導」は有料でなければならないのか
次に、コーチはバドミントン界、ひいては日本の指導文化が抱える根深い問題に切り込みました。それは「良い指導はただではない」という現実です。「金儲けは悪」「指導はハートでするもの」といった美しい言葉の裏で、多くの才能ある指導者が経済的に追い詰められ、業界全体の成長が阻害されているというのです。
指導の質と量のパラドックス
プロの指導者が生計を立てるには、一定数の受講生が必要です。しかし、受講生が増えれば増えるほど、一人ひとりにかけられる時間は減り、指導の質は必然的に低下します。この構造的な矛盾が、指導者を「質を犠牲にして量をとるか」「収入を諦めて質をとるか」という二者択一に追い込んでいるのです。
【コーチ】 (00:15:14)
受講生が増えれば増えるほど指導は画一化せざるを得ません。…つまり指導料だけで生活しようとすれば質を犠牲するか、量を諦めて収入を不安定にするかの2者択一を迫られてしまうと。この構造こそが多くの才能ある指導者の可能性を奪い業界の成長を阻害してるんじゃないかと思います。
【コーチ】 (00:16:37)
「金儲けは悪だ」っていう偏見ですよね。指導者はハートでするものみたいな…この言葉は一見美しく聞こえるかもしれませんね。しかしこういう思想がプロの指導者から正当な対価を受け取る権利を奪っていると。彼らを経済的に追い詰めていると。
コーチは、指導の価値を正当に評価する文化を醸成する必要があると訴えます。受講生側も「良い指導には正当な対価が必要だ」という意識を持つこと。それが巡り巡って、指導の質を高め、業界全体の発展につながるのです。
3. Mystery: 「頑固勢」はなぜ変われない?そのメカニズムと処方箋
フェニックスでお馴染みの「頑固勢」。なぜ彼らは、いくら論理的なアドバイスを受けても変わることができないのでしょうか。コーチは、その変化を阻む強固な壁について、衝撃的な見解を示しました。
それは、「恐怖」や「人生の一大イベント」といった、価値観を根底から揺さぶるような劇的な体験がなければ、人は本質的には変われないのではないか、というものです。宗教の改宗が難しいように、一度固まった信念を変えることは、説得だけでは不可能に近いのです。
【コーチ】 (00:36:37)
本当に恐怖に、突き動かされてやるんですよ、人って。いいのか悪いのか別としてですよ。…だけど変わるんですよ。人って恐怖があると。
【コーチ】 (00:39:26)
キリスト教信者がさ、もうキリスト教は絶対だってね、信じてる人にお前イスラム教信じろつったって信じないわけじゃないですか。それと同じですよね。頑固税を何か説得してさ…説得したところで無駄なんですよ。本当に頑固税を変えようと思ったらぶん殴るとかね。どのぐらいのことやらないと変わらないんじゃないかなっていうの思いますけどね。
これは過激な表現に聞こえるかもしれませんが、「普段の練習環境がいかに“ぬるま湯”であるか」を浮き彫りにします。小さなミスが許され、何も失うものがない環境では、本気で自分を変えようという動機は生まれにくいのかもしれません。
4. Debate: 常識を疑う思考実験「友達は大切?」「金でマウンティングは減る?」
教室では、私たちが当たり前だと思っている価値観に揺さぶりをかける、刺激的な思考実験が展開されました。
①「友達は大切」という幻想
「友達は大切」と声高に言う人ほど、実は他者に依存し、自立できていないのではないか?本当に力のある人間は、まず自立し、その上で他者に施しができる。この鋭い指摘は、人間関係の本質を考えさせられます。
【コーチ】 (00:28:42)
やっぱり友達大切っていう人は、収入が低いと思うんですよ。…要は自分1人で生きていけない人に頼って生きていくという、ま、ろなやついないよなって思うんですよ。自分1人で生きていけるような力を持つからこそ人に、施しができたりとかするわけでしょう。
② 金を賭ければマウンティングは消える?
巷の練習会でよく見られる「俺の方がうまいんだぞ」というマウンティング。コーチは、これに「金」を賭けるという劇薬を提案します。1試合に賞金や罰金を設定すれば、見栄やプライドは消え去り、誰もが純粋に「勝つため」のプレーに集中するのではないか、というのです。
【コーチ】 (00:33:14)
マジで勝たないとやばいなって思ったらもっとミスが減ってくるんじゃないかなと思うんですよ。俺の方がうまいんだぞみたいなアピールは一切減ってね。で、勝つためのプレイ目指すようになるんじゃない?すごいと思われようとかさ、関係なくなるんだよね。
これらの議論は、私たちが無意識に囚われている「常識」を疑い、物事の本質を見るための良い訓練となります。
5. Video Analysis: 新人選手に学ぶ「素直さ」という最強の武器
この日、練習に参加した新人選手の動画が共有されました。彼はまだ技術的に未熟な面はあるものの、コーチが絶賛する大きな可能性を秘めていました。それは「素直さ」です。
ミスをしても声を出して前を向き、楽しそうにプレーする。現在の自分の技術に固執せず、新しい打ち方を試すことに抵抗がない。この「素直さ」こそが、驚異的なスピードで成長する選手の共通点だとコーチは語ります。
【コーチ】 (00:44:12)
すっごい良くなったね。割と素直なんでね、ヨッシーみたいですよね。今の技術とかにこだわりがないのでどんどん変われる。
【コーチ】 (00:49:03)
練習が楽しいんだっていうのはやっぱりなんだかんだ言って1番大事だと思うんでね。…そういうのがあるのがすごいいいことじゃないかなと。大事にしていきたいよね。そういう気持ちは。
経験を積むほどに失われがちな、この「素直さ」と「楽しむ心」。これこそが、頑固税が最も見習うべき姿勢なのかもしれません。
6. Takeaways: コーチング的5つの学び
今回の教室から得られた、バドミントン上達と自己成長に不可欠な5つの重要な学びをまとめます。
思考の再現性が強さを生む
「ひらめき」に頼るプレーは運任せ。なぜそのショットを選んだのかを常に言語化し、思考のプロセスを繰り返すことで、再現性のある本物の技術が身につく。
指導の価値を正当に評価する
「指導はハート」という言葉に甘えず、質の高い指導には正当な対価が必要だと認識すること。それが指導者の成長を支え、最終的に自分の利益として返ってくる。
「頑固勢」は劇薬でしか変われない
人の価値観は、生半可な説得では変わらない。自分を変えたいなら、あえて「金を賭ける」「恥をかく」など、恐怖や痛みを感じる環境に身を置く覚悟が必要。
常識を疑う勇気を持つ
「友達は大切」「目標を先に決めろ」といった世間の常識を鵜呑みにしない。自分自身の頭で考え、物事の本質を見抜こうとする姿勢が成長を加速させる。
素直さと楽しむ心が最強の才能
プライドや過去の成功体験は成長の妨げになる。新しい知識をスポンジのように吸収する「素直さ」と、プレーを心から「楽しむ」気持ちを忘れないこと。
【コーチ】 (00:40:56)
どうなりたいとかどうありたいとかさ、後付けでいいんだって俺は思うんですよ。そんなもんね。すぐ変わってくんだからさ。やってるうちになんか変わってくるわけじゃないですかね。
7. Action: 思考を鍛える実践チェックリスト
今日の学びを具体的な行動に変えるためのチェックリストです。日々の練習で意識することで、あなたの思考は確実に変わっていきます。
思考を鍛える実践チェックリスト
8. Closing: 学びを力に変えるために
「ひらめき」から「思考」へ。指導の価値の再認識。「頑固税」という自己変革の壁。そして、常識を疑う知的なスリル。今回のオンライン教室は、単なる技術論を超え、私たちの成長に対するマインドセットそのものを問う、非常に密度の濃い時間となりました。
インプットした知識は、アウトプットして初めて自分のものになります。ぜひ、チェックリストを一つでも実践し、日々の練習で「思考」する癖をつけてみてください。その小さな積み重ねが、あなたを「頑固勢」から解放し、真の成長へと導くはずです。
【コーチ】 (00:50:47)
君は天才だよね。初回ヨッシーに言った声です。…はい。私、誰にでも言ってないですよね。
コーチが「天才」と認める選手に共通するのは、きっとこの「素直さ」なのでしょう。次回の教室でお会いする時、皆さんの思考が一段と深まっていることを楽しみにしています。