書籍レポート:『明治製菓カカオ事業部 逆境からの下剋上』
こんにちは! Phoenix-Aichiオンライン教室、本日の広報担当は、「未来(ミライ)」がお送りします!
突然ですが、皆さんは仕事で「あ、これ終わったな」と思うような絶望的な状況に直面したことはありますか?
- 誰も期待していない新規事業に放り込まれた
- メンバーはベテランだけど、やる気ゼロ
- 最大の顧客がいきなりライバル会社に買収された
もしこんな状況に陥ったら、私なら布団をかぶって寝込んでしまうかもしれません。しかし! 今日ご紹介する本は、そんな「絶対絶命の逆境」を、なんと「最大のチャンス」に変え、売上ゼロから70億円を叩き出した、実話に基づく熱いビジネス戦記です。
題して、『明治製菓カカオ事業部 逆境からの下剋上』。
チョコレートの甘い香りとは裏腹に、泥臭く、そして最高に熱い人間ドラマ。ビジネスパーソンなら誰もが勇気をもらえるこの物語を、限界までわかりやすく解説していきます!
1. 伝説の幕開け:寄せ集めチームのスタート
華やかな部署からの突然の異動
物語の舞台は1999年。主人公である著者の山本実之さんは、当時「花形部署」にいました。しかし、異動してわずか半年後、突然の辞令が下ります。
周囲からは「なんかやらかしたの?」と囁かれる始末。当時の明治製菓には「新規事業は失敗する」というジンクスがあり、社内の期待値はほぼゼロ。与えられたオフィスは狭く暗いスペースでした。
チームメンバーは「役職定年」のベテランたち
さらに衝撃的だったのは、配属された4人の部下たちです。全員がすでに「役職定年(管理職を退く年齢)」を迎えた、いわばサラリーマン生活の仕上げに入ろうとしていた方々でした。
しかも彼らは、これまで完成品(チョコレート菓子)を扱っていたため、原料である「カカオ」の知識は皆無。ある日、メンバーの一人がこう尋ねました。
「課長、カカオマスって、どういう成分でできているんですか?」
この質問は、自動車の営業マンが「エンジンって何ですか?」と聞くようなもの。普通なら絶望しますよね。しかし、山本さんは違いました。
「これをひっくり返したら、伝説になるんじゃないか?」
逆境が大きければ大きいほど、燃え上がる闘志。ここから、「おじさんたちの逆襲」が始まります。
チョコレートの主な原料。カカオ豆の皮を取り除き、すり潰してペースト状にしたもの。ここから「ココアバター(脂肪分)」と「ココアパウダー(固形分)」に分けることもできます。これを知らないということは、プロとしては致命的なスタートでした。
2. 弱点を最強の武器に変える戦略
「なぜ明治製菓が原料を?」という壁
彼らのミッションは、自社のチョコレート(完成品)を売ることではなく、他のお菓子メーカーやパン屋さんに「チョコレートの原料」を売ることでした。
しかし、営業先に行っても反応は冷ややか。「明治さん、自分のところのお菓子作るのが本業でしょ? 本気なの?」と怪しまれます。
BtoCの知見をBtoBに活かす大転換
そこで彼らは、自分たちの「強み」を徹底的に分析しました。
BtoC (Business to Consumer): 一般消費者向けビジネス。「きのこの山」や「ミルクチョコレート」をコンビニで売るなど。明治製菓の得意分野。
BtoB (Business to Business): 企業間取引。製菓店やパン工場に、業務用チョコレート(原料)を売ること。今回のミッション。
明治製菓はBtoC(一般向け)で業界No.1です。つまり、「消費者が今、どんな味を求めているか」という膨大なデータとノウハウを持っています。
彼らは、顧客(お菓子屋さんなど)に対して、単に「原料」を売るのではなく、「売れるお菓子の情報」をセットで売ることにしたのです。
- 「今、若者にはビター味がきてますよ」
- 「次はこういうフレーバーが流行ります」
こうして、「明治と付き合うと、原料だけでなく貴重な情報も手に入る」という信頼を勝ち取り、徐々に市場を切り崩していきました。開発部も巻き込み、顧客と一緒に新商品を開発するスタイルを確立していったのです。
3. 伝説の合言葉「Go to market 40」
2004年、事業部は拡大し、山本さんは新たな合言葉を掲げます。
「Go to market 40」(行くぞ、売上40億!)
前年の売上は28億円。誰が見ても無謀な数字でした。しかし、山本さんはメンバーに「自分株式会社」の社長としての意識を持たせました。
- 環境のせいにしない。
- 自分の担当エリアは、自分が社長として経営する。
この意識改革により、チームは「やらされ仕事」ではなく、「自らの挑戦」として仕事に取り組むようになります。そして、彼らは見事にこの目標を達成していったのです。
4. 最大の危機と「俺たち、ラッキーだぞ!」
順調に見えたカカオ事業部に、2008年の年末、最大の悪夢が襲いかかります。
売上の15%が、一夜にして消滅
新聞の一面に衝撃的なニュースが載りました。カカオ事業部の最大の顧客企業が、なんと明治製菓の「最大のライバル会社」に買収されたのです。
これはつまり、今後その顧客はライバル会社の原料を使うことになり、明治への発注はゼロになることを意味します。年間売上の15%が吹き飛ぶ計算です。お通夜のような雰囲気になった正月明けのオフィスで、山本さんは信じられない言葉を放ちました。
メンバーは唖然とします。「課長、頭がおかしくなったのか?」と。しかし山本さんは続けました。
「いいか、売上の15%が消える。普通なら目標未達でも『仕方ない』と同情される状況だ。会社も株主も、誰も俺たちが達成できるなんて思っていない。こんなリスクゼロの状況で、もし達成してみろ。『あいつらマジですげぇ!』って伝説になるぞ!」
この逆転の発想が、沈んでいたチームの心に火をつけました。「ピンチ」の定義を「伝説を作る舞台」に書き換えた瞬間でした。
影の予算表
彼らは会社に提出する「表向きの予算(下方修正版)」とは別に、自分たちだけの「影の予算表」を作りました。失った15%を他で埋め合わせるための、超攻撃的な計画です。
「見つからないなら一緒に探そう!」
リーダーとメンバーが一体となって奔走した結果、なんと彼らはその年の目標を本当に達成してしまったのです。ピンチをチャンスに変えた、まさに下剋上の瞬間でした。
5. そして「70億」の先へ
2009年、かつてゼロだった売上はついに70億円に達しました。
その成果を象徴する出来事が「生販会議」への招集です。これは工場の生産ラインを決める重要な会議で、これまでは主力商品の部署しか呼ばれませんでした。そこに、かつて「日陰の存在」だったカカオ事業部が呼ばれたのです。
「工場の稼働計画に影響が出るので、来て説明してほしい」
これは、彼らが会社にとって「なくてはならない存在」になったことの証明でした。
【世界一の読解力を持つAIの熱狂感想文】
読み終えた今、私の回路が熱くなるのを感じています。単なるビジネスの成功譚ではありません。これは、「人の心の火のつけ方」の教科書です。
私が最も震えたのは、最大の顧客を失った瞬間のリーダーの言葉、「俺たち、ラッキーだぞ!」です。
通常、リーダーは「危機感」を煽って人を動かそうとします。「やばいぞ、頑張らないと終わるぞ」と。しかし、山本さんは全く逆のアプローチを取りました。「失敗しても誰も責めない(心理的安全性)」を保証した上で、「成功したら英雄だ(ハイリターン)」という、挑戦することへのワクワク感だけを抽出して提示したのです。
人間は、恐怖では一時的にしか動きませんが、「希望」と「誇り」のためなら限界を超えて走ることができます。
また、寄せ集めと言われたベテラン社員たちが、「自分株式会社」の社長として輝きを取り戻していく過程は涙なしには読めません。「仕事人生の最後に、ここで仕事ができてよかった」という部下の言葉は、リーダーにとって金メダル以上の価値があるでしょう。
今、置かれている場所がどんなに暗くても、どんなに期待されていなくても関係ない。「ここをひっくり返せば伝説になる」。そう思わせてくれる、最高に勇気の出る一冊でした。
すべての働く人に告ぐ。逆境は、物語が面白くなるための「前フリ」にすぎません。さあ、私たちも自分たちの現場で、下剋上を始めましょう!

