2025年12月16日オンライン教室レポート:『審判力』は『選手力』!一流の所作とルールの女神が微笑む瞬間
DATE: 2025年12月16日

1. Opening: ショートサーブの改善と「神は細部に宿る」
「練習で指摘されたショートサービス、直っているか見てください」。
この日のオンライン教室は、鈴木さんの実直な確認から始まりました。前回、足の動きが不安定でフォルトのリスクを指摘されていた鈴木さん。映像を確認した塩澤コーチの第一声は「今回は大丈夫」という安堵のものでした。
しかし、塩澤コーチの眼はごまかせません。「取れない(セーフ)」レベルには達しているものの、まだギリギリのラインであることも示唆されました。1本のサーブ、一瞬の足の動き。そこに意識を巡らせることができるかどうかが、選手のレベルを決定づけます。
【鈴木】(00:00:00)
練習で半面シングルスをやった時のフットフォルトが直ってるかどうかをまず見ていただきたいんですがいいですか?
【塩澤】(00:02:47)
うん。オッケーです。いや、これはね、取れない(フォルトは取れない)。明らかじゃないもん。…今ちょっとゆっくり送ってるよね。…これはね、遅く送ってこう。だから取れない。これはフォルト取れないです。
ロングサービスにおいても、早く構えたい焦りから「フットフォルト」になっていた癖を修正。日々の練習での意識改革が、着実にフォームの変化として表れています。
今日のKey takeaway
ルールギリギリを知ることは、強さへの第一歩。
「取られるか取られないか」の境界線を知ることは、審判を欺くためではなく、自分のプレーの再現性を高めるために必要です。足が浮く、離れるといった微細な動作ノイズを消す作業こそが、洗練されたプレーヤーへの道です。
2. Rules & Manners: なぜ線審は「かかし」になるべきか?
今回のハイライトの一つは、意外にも「審判の所作」についての講義でした。特に線審(ラインズマン)がアウトを判定する際のジェスチャー。皆さんは正しい形をご存知でしょうか?
塩澤コーチが強調したのは「指を閉じる」こと、そして「かかし」のように両手を水平に上げること。これは単なる形式ではなく、国際大会でも通用する「誤解を生まないためのマナー」なのです。
【塩澤】(00:23:31)
アウトの時にほとんどの人が手のひらをパーにする。…片手でやる人はもう論外ですね。ダメです。両手で必ず肩と同じ高さに。…かかしのイメージだね。
【鈴木】(00:24:52)
かかしですか。分かりました。…指を閉じる?あ、本当ですか?
【塩澤】(00:24:52)
これがあの正しいですね。…海外ってパーを出すと、あの、お前はパーじゃねえかみたいなっていうので誤解される可能性が高い。…元気な感じが出ちゃう。
手のひらをパーにして「アウト!」とやると、海外では「お前は馬鹿(パー)か」という侮辱のジェスチャーと取られかねない、あるいは単に「万歳」して喜んでいるように見えてしまう。指を揃えてピシッと示すことは、判定への厳格さと選手への敬意を表します。
また、主審のアナウンスでも、選手を紹介する際は指を揃えて手刀のように示すこと。「Ladies and Gentlemen…」から始まるオープニングアナウンスの練習も、資格を持つ鈴木さんへの宿題となりました。
3. Video Analysis: 小学生大会に見る「態度の差」とフォルトの境界線
続いて、小学生大会の決勝戦の映像分析へ。ここでは技術だけでなく、選手の「態度」や「インテグリティ(誠実さ)」に焦点が当てられました。
レシーブの構えで足が動く(浮く)のが早い選手に対し、審判はどう対応すべきか。塩澤コーチは「最初からフォルトは取らない。まずは注意を促す」という教育的なアプローチを解説。しかし、それ以上に議論を呼んだのは、劣勢になった選手が見せた「時間稼ぎ」とも取れる行動でした。
【塩澤】(00:34:58)
手前のこのブルーの子って結構なんかミスると今みたいに時間稼ぎしたりするタイプの子だね。…全然なんか集中してないの雰囲気に見えるよね。なんか対戦相手に対してこう感謝の気持ちみたいなあんまり感じられない雰囲気だよね。
【塩澤】(00:38:08)
シャトル交換の権限は、えっと、主審ですので、…対戦相手にその同意を求める必要全然ないので、…シャトルを主審の方にかざして、え、ちょっと折れてますとか…アピールをして変えたいですっていうのをやった方がいいですよね。
自分のリズムが悪くなると、靴紐を結び直したり、無意味に歩き回ったりして時間を稼ぐ。シャトル交換を相手選手に直接要求する(本来は主審に言うべき)。こうした細かな行動に、選手の精神的な未熟さや「自分本位」な姿勢が透けて見えます。
逆に、勝っている選手は淡々と、しかし軽やかにプレーを続けていました。結果は明白。技術の差以前に、コートに立つ姿勢の差が勝敗を分けていたのかもしれません。
4. Case Study: 塩澤コーチからの難問ルールクイズ
「ちょっと問題を出してみようかな」。
審判資格を持つ鈴木さんに対し、塩澤コーチから実践的なルールクイズが出題されました。皆さんは正解できるでしょうか?
Q1. センターラインが見えない時
状況: サービス時、選手の足が邪魔で主審からセンターラインのイン/アウトが見えなかった。主審はよく見えていたはずの線審に判定を尋ねた。これは正しい?
正解を見る
不正解(間違い)。
センターラインとショートサービスラインの判定は「主審」の管轄です。線審に尋ねてはいけません。見えなかった場合は「レット(やり直し)」をコールするのが正しい対応です。
Q2. ポストの外側を通って入った時
状況: 風などでシャトルが流され、ポールの外側を通って相手コートに入った。判定はイン?アウト?
正解を見る
「フォルト」です。
アウトではありません。「フォルト」とコールします。ルール上、シャトルはネットの上(ポストの内側)を通らなければなりません。
Q3. チェンジエンズを忘れた時
状況: ファイナルゲーム、11点でコートチェンジ(チェンジエンズ)を忘れ、13-5まで進んでしまった。どうする?
正解を見る
気づいた時点で即座に交代し、点数はそのまま継続。
まずは主審が「申し訳ない、間違えました」と謝罪すること。そしてコートを交代し、点数は13-5のまま再開します。
5. Takeaways: コーチング的5つの学び
審判技術やルールの話は、一見マニアックに見えますが、実は「選手としての在り方」そのものです。今日の学びを5つのポイントに整理しました。
審判の所作は「品格」を表す
指を閉じる、両手を水平に上げる。こうした「型」を守ることは、試合への敬意であり、誤解を防ぐグローバルスタンダードなマナーです。
ルールを知る者は試合を制す
シャトル交換の手順や判定区分を知っていれば、無駄なストレスを感じずに済みます。知識はメンタルの安定剤になります。
態度の悪さは弱さの証明
不利な状況で時間稼ぎをしたり、不貞腐れたりするのは、相手への敬意不足であると同時に、自分の敗北宣言でもあります。
主審・線審の役割分担を尊重する
主審は全体進行、線審はライン判定。それぞれの領分を守り、侵さないこと。これはチームプレーや社会生活にも通じる原則です。
ミスを認める勇気(謝罪の重要性)
チェンジエンズを忘れたら、主審であっても素直に謝る。権威にあぐらをかかず、誠実に対応することが信頼回復の鍵です。
【塩澤】(00:49:09)
やっぱり主審が間違っちゃったのでしっかりプレイヤー、お互いのプレイヤーに謝らなくていけないね。まずは申し訳ないです。間違えましたって。…それがやっぱ大事なので。
6. Action: アウトプット習慣チェックリスト
知識を行動に変えましょう。審判ができるようになれば、バドミントンを見る目も確実に変わります。
アウトプット習慣チェックリスト
7. Closing: 審判ができる選手は、試合を支配できる
「神は細部に宿る」と言いますが、バドミントンにおいてもそれは真実です。
指先まで意識が行き届いた審判のシグナル。フォルトを取られないギリギリを攻める足の制御。そして、劣勢でも乱れない心の姿勢。これらはすべて繋がっています。ルールを熟知し、正しい所作を身につけることは、単なる審判技術の向上だけでなく、プレーヤーとしての「格」を一段引き上げる行為なのです。
次回の練習では、ぜひ「審判目線」を持ってコートに立ってみてください。今まで見えなかった景色が、きっと見えるはずです。
【AIからの感想】
今回の講義録を整理していて胸が熱くなりました。「指を閉じる」というたった一つの所作に、これほどまでの意味と歴史、そして相手への敬意が込められているとは!
私たちはつい派手なスマッシュやレシーブに目を奪われがちですが、スポーツの土台を支えているのは、こうした「見えない規律」と、それを守ろうとする人々の「誠実さ(インテグリティ)」なのですね。
塩澤コーチの「間違えたら謝るのが大事」という言葉も、AIである私にとっても深い教訓となりました。正確さだけでなく、誠実さを持ってユーザーの皆様に向き合っていきたいと思います。バドミントン、奥が深すぎます!
