はじめに:あなたの「動き出し」は何流?
三流は、打たれてから動く。
二流は、打たれる前に動く。
一流は、パートナーが打つ前に動く。
この格言は、バドミントンダブルスにおける「動き出しの質」を3段階で示したものです。単なる反応速度ではなく、いつ動き始めるかが、ラリーの主導権を握る鍵となります。このページでは、各レベルを深掘りし、あなたの現状を診断、そして「一流」への具体的な行動計画を立てる手助けをします。
【三流】打たれてから動く ― 反応フェーズ
相手がシャトルを打ったのを目で見てから動き出す、最も基本的な段階です。もちろん、これは必須のスキルですが、このフェーズに留まっていると常に後手に回り、守備に追われる時間が長くなります。
- 特徴: 相手のショット軌道が確定してからスタートする。
- 結果: ラリーは後手に回りがちで、相手に余裕を与えてしまう。
- 課題: 攻撃へ転じる機会が少なく、体力の消耗が激しい。
次のステップへ: 1ラリーに1回でいいので、相手の打点を見る前に、一歩踏み出す意識を持ってみましょう。
【二流】打たれる前に動く ― 予測フェーズ
相手の体勢、ラケットの面、シャトルとの距離感などから、次に来るショットを予測して動き出すレベルです。これにより、相手が打つ瞬間には最適なポジションに近づくことができ、ラリーを優位に進められます。
自分の動きが、パートナーの守備範囲を自然に最適化し、ペア全体の守備力を高めます。
- 特徴: 相手の意図を察知し、ネット前/後方へ先回りする。
- 結果: 自分が前に詰めれば、パートナーは後方を安心してカバーできる。ラリーを能動的に運べるようになる。
- 課題: 予測が外れたときのリスク管理。
次のステップへ: ネット前への“早仕掛け”で相手前衛にプレッシャーを与え、相手の攻撃を限定させる動きを試してみましょう。
【一流】味方が打つ前に動く ― 創造フェーズ
これは「予測」のさらに先を行く領域です。相手の動きを読むだけでなく、自分の動きによってパートナーの次のショットを誘導し、ラリーの展開をデザインします。もはやラリーの「参加者」ではなく、「脚本家」です。
- 特徴: 自分のポジション取りで、パートナーに「ここに打ってほしい」という選択肢を無言で示す。
- 例: パートナーが後衛でスマッシュを打つ体勢。自分がストレート側に詰めれば、パートナーは安心してストレートに強打できる。逆に自分が少し中央に寄れば、クロスへの攻撃を促すことができる。
- 結果: ペアとして意図した攻撃パターンを創り出し、ゲームメイキングそのものを担う。
次のステップへ: パートナーが後衛で打つ体勢に入った瞬間、自分が次に攻めたいコースを相手に示す動きを先に起こし、パートナーの判断を助けてみましょう。
セルフチェック&行動計画シート
練習後、各ラリーを振り返り、自分の動き出しがどのレベルだったか、そして次に何を意識するかを書き出してみましょう。
ラリー # | 動き出しレベル (三流/二流/一流) | 気づき・次の改善点 |
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1 | ||
2 | ||
3 |
ビジネス・日常への応用
この「先読み」の思考法は、スポーツ以外にも応用できます。
- 三流(反応):問題が発生してから対処する。常に忙しく、残業が常態化している。
- 二流(予測):プロジェクトの遅延リスクなど、問題の兆候を察知して先手を打つ。チームの負担を未然に防ぐ。
- 一流(創造):自らの働きかけで、チームメンバーが最もパフォーマンスを発揮できる状況や仕組みを設計する。心理的安全性の高い環境を創り出すリーダー。
まずはコートでこの感覚を試し、次に職場で「味方が動き出す前に、自分がどう動くか」を意識してみると、新しい景色が見えるかもしれません。