Phoenix-Aichiオンライン教室
2025年7月24日 オンライン教室レポート
その情熱は、本物か?
選手の心に“信念の錨”を下ろす指導法

なぜ選手の情熱は続かないのか?
「この選手は才能があるのに、どうして情熱が長続きしないのだろう…」
多くの指導者が、一度はこのような壁に突き当たった経験があるのではないでしょうか。選手が心からついていきたいと思うほどの魅力と熱意を持つ指導者であっても、選手の「恒常的な情熱」に気づかせ、それを維持させることは、至難の業だと感じてしまうかもしれません。
しかし、それは指導者としての能力が不得手なのではなく、アプローチの方法を少し変えるだけで、驚くほどの変化が生まれる可能性があります。この記事では、選手の心の奥底に眠る、決して消えることのない情熱の源泉に火をつけるための具体的な方策を探ります。
「ブレない信念」の正体は、個人の“宗教”にある
そもそも、何があっても「ブレない人」は、なぜそれほどまでに強い意志を貫けるのでしょうか。極端な例ですが、歴史を振り返ると、自らの命すら懸けて目的を遂行する人々がいました。彼らを支えているのは、多くの場合、強力な「信念」です。そしてその信念は、しばしば「宗教」によって形成されてきました。
ここで言う「宗教」とは、特定の教団や教義を指すものではありません。それは、個人の行動を根底から支える「絶対に譲れない価値観」や「人生を懸けて追い求める目的」の比喩です。
「バドミントンによって自分は生かされている。だからバドミントンに恩返しがしたい」という想いは、一種の「バドミントン教」と呼べるかもしれません。このような個人の内から湧き出る強い動機こそが、人をブレさせない「恒常的な情熱」の正体なのです。
指導者である私たちが神になることはできません。しかし、選手一人ひとりの中に眠る、その選手だけの「宗教」を見つけてあげる手伝いはできるはずです。
指導者の使命:選手の“宗教”を発見し、言語化する
では、どうすれば選手の「宗教」、すなわち恒常的な情熱の源泉を見つけ出せるのでしょうか。その方策は、2つのステップに集約されます。
ステップ1:選手を、選手以上に知る
これは、多くの熱心な指導者がすでに行っていることです。選手と多くの時間を共にし、語り合い、笑い、時には涙を流す。その過程で、選手の性格や価値観、何に喜び、何に傷つくのかを深く理解する。選手自身でさえ気づいていない、無意識の動機や願いを察知するには、この深い関係性が不可欠です。
ステップ2:「なぜやるのか?」を言葉にする
これが最も重要なステップです。漠然と「勝ちたい」「上手くなりたい」という気持ちだけでは、気分や状況によって揺らいでしまいます。それはまだ信念ではなく、単なる「願望」に過ぎません。
なぜ、そこまでして勝ちたいのか? なぜ、その競技を続けているのか?
その根源的な「なぜ?」に対する答えを、選手に代わって、あるいは選手と共に「言葉」にしてあげるのです。言葉にすることで、漠然とした感情は脳が認識できる明確な「信念」へと昇華されます。そして、言葉になった信念は、困難な時にいつでも立ち返ることができる、心の拠り所となるのです。
具体例:選手の心に眠る「恒常的な情熱の源」とは
選手の「宗教」は、一人ひとり全く異なります。指導者は、注意深い観察と対話を通じて、その源泉がどこにあるのかを探り当てる必要があります。
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感謝の表現:「いつも支えてくれる両親を、最高の笑顔にしたい」
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大切な人への想い:「大好きなあの人に、涙が出るほど喜んでほしい」
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指導者への信頼:「誰よりも自分の味方でいてくれる先生を、絶対にがっかりさせたくない」
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自己成長の追求:「この競技を通じて人間的な総合力を高め、人生の最後に満足したい」
これらはほんの一例です。指導者がこれらの根源的な動機を的確に言語化し、折に触れて選手に思い出させてあげることで、その言葉は選手の心の中で強力なエネルギーとなり、情熱の炎を燃やし続けるでしょう。
まとめ:情熱に火を灯す、指導者の観察眼と言葉の力
選手の心の奥底に眠る「宗教(恒常的な情熱の源)」を見つけ出し、それを「言葉」にして伝え、そしてその信念が本当に根付いているかを「洞察」し続ける——。
これは、間違いなく膨大なエネルギーを必要とする営みです。しかし、選手と真摯に向き合い、その成長を心から願う指導者の皆さんだからこそ、成し遂げられる所業でもあります。「恒常的な情熱に気づかせるのは不得手だ」と感じていたとしたら、それは勘違いかもしれません。
選手も指導者も、力を合わせて。
あなたの深い洞察力と言葉の力が、選手の可能性を最大限に引き出す鍵となります。さあ、選手の心の奥底にある「なぜ?」を探す旅を、今日から始めてみませんか。