Phoenix-Aichi オンライン教室

2025年10月4日オンライン教室:『賢く勝とうとすると愚かに負ける』―ナイスショットの罠と”振り返る力”

DATE: 2025年10月4日

霧のかかった静かな森の小道―日々の地道な練習と深い思考を象徴する大自然の風景

1. Opening: 「なぜ?」と問う勇気が、あなたを育てる

この日のオンライン教室は、前回の「なぜ?と問う勇気」の振り返りからスタートしました。「もっと腰を落とせ」「肩甲骨を寄せろ」――。指導者から当たり前のように飛んでくる指示ですが、その理由を本当に理解してプレーしているでしょうか?

コーチは、指導者側の経験則だけで語られる指示と、それを鵜呑みにしてしまう選手側の思考停止に警鐘を鳴らします。分からないことを「なぜですか?」と問うコミュニケーションこそが、選手だけでなく指導者をも成長させる鍵となるのです。

【中島コーチ】 (00:00:00)

指導者も経験則でちゃってるところあると思うんですよね。自分がこれをやって勝ってきたんだからそれが正しいんだ、みたいな。で、選手もそれを質問しないから結局、教えてる側も教えられる側も理解せずにやってしまうという状況になりかねない。

【中島コーチ】 (04:02)

困らせるためじゃなくて、コミュニケーションですよね。これどうしてなんだっけ、と。指導者も考えたりすると思うので。…私以外の人とかでも多分考えずに教えてる人とかもいると思うんで、そういう人に聞いてあげるとその指導者も成長できるんじゃないかなと思います。

また、「全員に嫌われる勇気」と「勝つこと」のトレードオフについても改めて問いかけられました。勝利を追求する道は、時に孤立を伴うかもしれません。しかし、その覚悟なくして本当の成長はあり得ないのです。

今日のKey takeaway

真の賢さとは、本番で無心で動ける状態を作り出すこと。 試合中に小手先の知恵を巡らせるのではなく、日々の練習で思考の汗を流し尽くし、あらゆる経験を体に染み込ませる。本番では、その体を信じて自動操縦させるのだ。

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2. Deep Dive: 「賢く勝とうとすると愚かに負ける」の真意

「もっと頭を使え」「考えてプレーしろ」とよく言われます。しかし、コーチは「賢く勝とうとすると、かえって愚かな負け方をする」という逆説的な格言を提示しました。これは思考を否定するものでは決してありません。むしろ、思考の「ステージ」がどこにあるべきかを鋭く問うています。

試合本番で、練習もしていない戦術や相手の裏をかくような動きを付け焼き刃で試みても、体が反応せず、硬直してしまうのが関の山。真の賢さとは、本番で発揮するものではなく、本番までの準備段階で発揮するものなのです。

【中島コーチ】 (05:35)

結構賢く勝とうとする人ってね、結構いると思うんですよ。要領よく勝とうとかね。…実は、体に染み込んでない戦術だったり動き方をね、表面的にやろうとしてもなかなかうまくいかないですよね。

【中島コーチ】 (06:52)

練習で徹底的に頭を使うっていうのはいいと思います。…思考の汗を練習で流し尽くし、成功も失敗も含めた全ての経験を無意識レベルで体に記憶させる。で、試合ではそんな考えるっていうことはあまりせずにもう自分を信じて、体を信じて自動操縦させる。

日々の練習で戦術を試し、配球を考え、相手を分析し、自分のプレーを客観視する。この地味なプロセスで流す「思考の汗」こそが、本番で無心で、かつ最適に動ける体を作り上げます。試合では「相手より3倍動いてやる」くらいの、ある意味で愚直な姿勢が、結果的に最高のパフォーマンスを引き出すのです。

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3. Video Analysis: ナイスショットの後に潜む「5連続失点」の罠

この日の動画分析では、衝撃的なシーンが映し出されました。あるダブルスの試合、ゲーム終盤で16-15とリードしている場面。ここで放たれたライン際のナイスショット。誰もが「これで流れを掴んだ」と思った次の瞬間から、悪夢の5連続失点が始まり、ゲームセット。なぜこんなことが起きてしまうのでしょうか?

なぜナイスショットが命取りになるのか?

  • 危機感の欠如: 際どいショットが決まると、選手は「やばい」ではなく「ほっとする」。本来なら引き締めるべき場面で、無意識に気が緩んでしまう。
  • リスクの高い選択: 終盤でのライン際へのショットは、成功すればリターンが大きいですが、失敗すれば流れを失うハイリスクなプレー。コーチは「やるなら前半」と指摘します。
  • 振り返りの不足: 多くの選手は「ナイスショットだった」という成功体験だけを記憶し、その後の失点の流れを分析しません。結果、同じ過ちを繰り返します。

【アキコ】

え、このナイスショットの後から5失点!?信じられない…。

【中島コーチ】 (31:23)

16からさ、ナイスショット出て5連続で終わり。衝撃だね。…あの1本行っちゃった時にこれを予想できたかどうかっていうと、予想できないんじゃない?「あ、良かったね」とか「ほっとする」んじゃない?入ったつってね。それが危ないんですよ。「やばい」って思わないと。

【トオル】

確かに、良いプレーが出た後は少し気持ちが大きくなってしまうかもしれません。引き締める動作、意識してみます。

さらに、コーチはレシーブ時の「待てていないのに触りに行く」という共通の課題も指摘。相手が打つ瞬間にラケットが上がっていなければ、それは「待てていない」証拠。その場合は勇気を持ってスルーすべきなのに、チャンスだと思って手を出してミスをする。これもまた、無意識レベルでの判断が未熟なために起こる現象です。

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4. Mystery: なぜ「振り返り」が中級の壁を破るのか?

「ナイスショットの後の5連続失点」。この恐ろしい現実を、ほとんどの中級者は気づかずに見過ごしてしまいます。試合後、記憶に残っているのは「勝ったか負けたか」という結果と、いくつかの印象的なプレーだけ。だから、同じ失敗を何度も繰り返してしまうのです。

コーチは、中級者が上達できない根本的な理由は、この「振り返りの欠如」にあると断言します。Phoenix-Aichiが他と一線を画すのは、まさにこの「しつこいほどの振り返り」を徹底している点にあります。

【中島コーチ】 (32:59)

こういうのもさ、勉強会に出ないとわかんないよね。ただゲーム練習してね、「ああ、ファイナルで勝った」みたいな感じの結果しか覚えてないからさ。…あんなナイスショットの後に5失点とかさ、実はね、こんな恐ろしいことになってんですよって。振り返らないと分からないと思う。

【中島コーチ】 (34:00)

だから中級の人達ってなかなか上に行けないんだよね。振り返りをしないからさ。はい。フェニックスの人たちはね、もう本当に恵まれてると思いますよ。こうやって振り返りができてね。

一球一球のプレーを映像で見返し、「なぜこのショットを選択したのか?」「なぜミスが起きたのか?」「タッチの質はどうだったか?」と深く掘り下げていく。このプロセスを通じて初めて、自分のプレーを客観視し、無意識の癖や思考の偏りに気づくことができます。この地道な作業こそが、感覚を研ぎ澄まし、真の賢さ、つまり「無意識レベルで最適に動ける体」を育む唯一の方法なのです。

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5. Takeaways: コーチング的5つの学び

今回の教室は、試合に勝つための表面的なテクニックではなく、成長し続けるための根源的な思考法を学ぶ貴重な機会となりました。重要なポイントを5つに凝縮して振り返ります。

1

思考の汗は「練習」で流せ

真の賢さとは、試合本番で小細工をすることではない。日々の練習の中で徹底的に考え、試し、失敗し、全ての経験を体に染み込ませること。本番は体を信じ、自動操縦で戦う。

2

ナイスショットの後にこそ「危機感」を

際どいスーパープレーが決まった時こそ、最大の危機。安堵や油断が生まれ、流れを失う原因になる。「やばい」と感じ、意識的に心身を引き締める習慣をつけよう。

3

「待てない」なら「触るな」

相手が打つ瞬間にラケットが上がっていなければ、それは「待てていない」証拠。反射的に手を出せばミスにつながる。準備ができていないなら、勇気を持ってスルーする判断力も実力のうち。

4

上達の鍵は「しつこい振り返り」にあり

勝敗や記憶に残るプレーだけでなく、全てのプレーを客観的に見返すこと。なぜそのプレーが起きたのかを言語化し、分析する地道な作業が、中級の壁を打ち破る唯一の道だ。

5

「なぜ?」と問う勇気が双方を育てる

指導者の指示を鵜呑みにせず、「なぜそうするのか?」を問い、理解しようとすること。その問いは自分だけでなく、指導者にも新たな気づきを与え、共に成長するきっかけとなる。

【アキコ】

振り返ってみると、ナイスショットの後にあっさり逆転される経験、確かにあります…。勝敗だけじゃなく、そのプロセスを細かく見ることの大切さがよく分かりました。

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6. Action: アウトプット習慣チェックリスト

学びを行動に変え、体に染み込ませるための具体的なアクションリストです。インプットで終わらせず、一つでも実践して「振り返る力」を養いましょう。

アウトプット習慣チェックリスト

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7. Closing: 今日の学びを明日の一歩へ

「賢く勝とうとすると愚かに負ける」。この深い言葉は、私たちの練習への向き合い方を根本から問い直してくれます。目先の勝利や派手なプレーに一喜一憂するのではなく、日々の地道な思考と、失敗を恐れない徹底的な振り返りこそが、揺るぎない実力を築くのです。

ナイスショットの後の連続失点という現実は、誰にでも起こりうる罠です。しかし、その罠の存在を知り、振り返る術を持つ私たちは、もう同じ過ちを繰り返すことはないはずです。今日の学びを胸に、明日からの練習に臨みましょう。

【参加者】

自分の試合を振り返るのが怖かったですが、今日の話を聞いて、むしろ宝の山に見えてきました。早速、動画を見返してみます。

【中島コーチ】 (35:10)

はい、ぜひやってみてください。他のチームはやってないですからね。それをやるだけで、大きなアドバンテージになります。では、また明日頑張りましょう。お疲れ様でした。

インプットで終わらせず、チェックリストのアクションを一つでも実行してみてください。その小さな一歩が、あなたを中級の壁の向こう側へと導いてくれるはずです。次回のオンライン教室も、皆さんのご参加をお待ちしています!

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