こんにちは！Phoenix-Aichiオンライン教室、本日のブログ担当は、広報担当の「カケル」です！

突然ですが、皆さんは「経営戦略」と聞いて何を思い浮かべますか？
難しそう？ コンサルタントだけのもの？ いえいえ、違います。これは、「人間がどうすれば効率よく、そして幸せに成果を出せるか」を100年かけて追い求めた、情熱の物語なんです。

今日は、ビジネス書大賞などを総なめにした名著、三谷宏治先生の『経営戦略全史〔完全版〕』を、限界までわかりやすく噛み砕いてご紹介します。まるで大河ドラマのような「知の旅」へ、一緒に出かけましょう！

1. 夜明け前：スコップと感情の発見（20世紀初頭）

物語は100年前のアメリカから始まります。当時の工場は、職人さんの「勘」と「経験」だけが頼りでした。そこに現れたのが、二人の巨人です。

① フレデリック・テイラー：科学で管理せよ！

テイラーさんは元々、目の悪さからハーバードを中退して見習い工になったという苦労人。彼は現場を見て思いました。「もっと科学的にやれば楽に稼げるのに！」と。

彼は有名な「ショベル作業の研究」を行いました。

しかし、「人間を機械のように扱っている」という批判も浴びることになります。

② エルトン・メイヨー：人間は感情で動く！

テイラーの10年後、メイヨーさんが登場します。彼はある紡績工場で「休憩時間」を導入し、離職率を250%から5%に激減させました。さらに有名な「ホーソン実験（照明実験など）」を行います。

驚くべきことに、工場の照明を明るくしても暗くしても、生産性は上がったのです。なぜか？ それは「誰かが自分たちに関心を持って見守ってくれている」と感じたからでした。

ここから、経営学は「冷徹な科学」と「複雑な人間心理」という二つのテーマに向き合うことになります。

2. 近代マネジメントの三賢人（1950〜60年代）

時代は進み、経営を体系化する「知の巨人」たちが現れます。

① ドラッカー：マネジメントの伝道師

「マネジメント」という言葉を世界に広めたのが彼です。彼は巨大企業GMを調査し、分権化の重要性を説きました。企業は単にお金を稼ぐ機械ではなく、「顧客の創造」を行う人間的・社会的な機関であると定義しました。

② アンゾフ：経営戦略の真の父

「戦略（Strategy）」という言葉をビジネスに定着させたのがアンゾフです。彼は軍事用語だった戦略を企業に応用しました。

彼はこの「3Sモデル」を提唱し、「市場のどこで戦うか」を決めることが重要だと説きました。有名な「アンゾフの成長マトリクス（多角化）」も彼の功績です。

③ コトラー：マーケティングの神様

「売れる仕組み」を科学したのがコトラーです。彼はマーケティングの手順を美しいプロセスにまとめました。

3. 仁義なき戦い：ポジショニング派 vs ケイパビリティ派

ここから経営戦略の歴史は、大きく二つの派閥の対立構造に入ります。「外」を見るか、「内」を見るか、の大論争です。

① ポジショニング派（外）：マイケル・ポーター

35歳でハーバードの正教授になった天才、ポーター。「儲かる市場を選び、儲かる位置（ポジション）を取れば勝てる」と説きました。

彼の武器は「ファイブフォース分析（5つの競争要因）」です。業界の構造を分析し、敵が少なく、買い叩かれにくい場所を探せ、と言います。つまり、「どこで戦うか（Where）」が全てだという考え方です。

② ケイパビリティ派（内）：トム・ピーターズら

これに「待った」をかけたのが、マッキンゼー出身のトム・ピーターズたちです。「場所が良くても、企業自体に力がなきゃ意味ないでしょ！」と反論しました。

彼らはベストセラー『エクセレント・カンパニー』の中で、超優良企業の共通点を分析し、「7Sフレームワーク」を提唱しました。

その後、ゲイリー・ハメルらが「コア・コンピタンス（他社が真似できない核となる能力）」を提唱し、この流れを加速させました。

4. そして統合、そして未来へ

「外の位置取り」か「内の実力」か。この論争に終止符を打とうとしたのが、ヘンリー・ミンツバーグです。

ミンツバーグの「コンフィギュレーション」

彼は言いました。「どっちが正解とかじゃなくて、場合による（It depends）」と。

創業期には勢いが必要だし、安定期には管理が必要。企業のフェーズによって最適な戦略は変わる。戦略は机の上で作るものではなく、現場から生まれる「アート」のようなものだ、と説きました。

21世紀〜22世紀の戦い方：アダプティブ戦略

そして現代。変化のスピードは凄まじく、じっくり計画を立てている暇はありません。そこで主流になったのが「試行錯誤型」の経営です。

• リーン・スタートアップ（エリック・リース）：
  「やってみなきゃわからない」を前提に、最小限の製品ですぐに市場に出し、顧客の反応を見て高速で修正する。
• アダプティブ戦略：
  計画（Plan）よりも、適応（Adapt）を重視する。

「正解のない世界」で生き残るには、素早く動き、素早く失敗し、そこから学ぶしかないのです。

まとめ：広報担当カケルの視点

いかがでしたか？ 100年の歴史を一気に駆け抜けました。

• テイラーが「効率」を追求し、
• メイヨーが「人間性」を発見し、
• ポーターが「場所選び」を説き、
• ピーターズが「組織の強さ」を訴え、
• 現代は「高速な適応」が求められている。

この本が教えてくれるのは、たった一つの正解ではありません。先人たちが必死に考え抜いた「思考の武器」の数々です。これらを道具箱（ツールキット）として持っておけば、皆さんのビジネスや人生の壁にぶつかった時、必ず助けになるはずです。

もし興味が湧いたら、ぜひ原著を手に取ってみてください。そこには、さらに深い知の森が広がっていますよ！