2025年7月11日
力を合わせるは、己を知る道なり:シャトルが繋ぐバドミントン究極の上達論
「スマッシュで決めたい」「相手のミスで勝ちたい」
バドミントンの練習中、誰もが一度は抱く感情です。しかし、その「勝ちたい」という気持ちが、かえってあなたの上達を妨げているとしたら…?
今回は、当教室のコンセプト「力を合わせて上達しよう」に込められた、一見すると矛盾に満ちた練習の真髄を解き明かします。ラリーが続かない、練習の強度が上がらないといった悩みを乗り越え、本当の意味で「強く」なるための思考法です。
1. なぜ「勝利至上主義」の練習は伸び悩むのか?
バドミントンの練習風景を思い浮かべてみてください。多くのケースは、以下の2つのパターンに集約されます。
パターンA:攻撃至上主義
「とにかく決める!」という意識が強すぎるとどうなるでしょう。
- 決めようとして力み、ミスが増える。
- 運良く決まっても、ラリーが終わる。
- 結果:ラリーが短く、大半が「球拾い」の時間になる。
パターンB:ミス待ち戦法
「相手のミスを待つ」ことに徹するとどうなるでしょう。
- 安全な甘い球を返し、相手に強打を誘う。
- 相手がミスをするか、決めてしまうか。
- 結果:やはりラリーは短く、「球拾い」か「強度の低い練習」に陥る。
共通の問題点
どちらのパターンも、「ラリーが短くなる」「練習強度が低下する」という致命的な欠点を抱えています。これでは、技術を磨くための反復練習ができず、上達が遅れるのは必然です。
2. 安易な解決策が招く「新たな罠」
では、単純に「決めなければ良い」「厳しく狙わなければ良い」のでしょうか?一見すると論理的ですが、この安易な解決策こそが、成長を阻む「新たな罠」となります。
- 「攻撃力を低下させる」問題点: ただ手加減するだけでは、ショットの難易度が下がり、攻撃技術も防御技術も向上しません。何より「決める快感」を失い、モチベーションが低下します。
- 「甘く返す」問題点: ただ甘く返すだけでは、簡単に決められてしまい、返球の機会そのものが失われます。「決められる屈辱」は、次の一球への意欲を削いでしまうでしょう。
つまり、「勝ち」にこだわりすぎてもダメ、「勝ち」を放棄しすぎてもダメ。このジレンマこそが、多くの中級者がぶつかる壁なのです。
3. 格言:相反する問題を超える「超解決策」とは
この相反する問題を乗り越える鍵は、視点の転換にあります。それは、自分一人で完結するのではなく、相手と「協力」して練習の質を高めるという考え方です。
超解決策:相互の限界を引き出す配球
攻撃側は…
「相手が”何とか返せる”ギリギリの厳しさ」で配球し続ける。
防御側は…
「自分が”何とか返せる”ギリギリの甘さ」で返球し続ける。
厳しすぎればラリーは終わり、甘すぎれば練習になりません。「ギリギリのライン」を探り合い、維持し続けること。これ自体が、極めて難易度の高い技術練習となるのです。
「決めないことを学ぶのは、決め方を学ぶことでもある。」
「ミスをさせないことを学ぶのは、ミスをさせることを学ぶことでもある。」
これはまさに孫子の兵法で言う「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」。相手の限界を知ることで、自分の技術の精度が磨かれます。これこそが、対人競技における上達の王道なのです。
4. 心の壁を超える:練習の先にある「人生の目的」
しかし、技術論だけでは乗り越えられない壁があります。それは「決める快感」や「決められる屈辱」といった、私たちの心を揺さぶる感情です。
ここで一度、自問してみてください。
- なぜ、今この瞬間に快感を得たいのか?
- なぜ、バドミントンをしているのか?
- その行動は、あなたの人生の目的に繋がっているか?
練習相手を自分の快感のために「利用」することは、長期的な自己の成長という目的にとって、本当に正しい選択でしょうか。自分の人生の目的から逆算すれば、目先の感情に囚われず、今すべき最適な行動が見えてくるはずです。
5. 結論:「力を合わせて上達する」ことの真の意味
ここまで思考を深めると、驚くべき事実に気づきます。
たとえ個々の目的(「名声を得たい」「ただ楽しみたい」など)が異なっていても、上達への最短ルートは「力を合わせる」という一点で共通するのです。
相反する利害や問題を抱えていても、私たちの脳は、それを乗り越える「超解決策」を創り出せる。これこそが、チームコンセプト「力を合わせて上達しよう」に込めた本当の思いです。
最後に。「シャトル」の語源をご存じですか?
機(はた)の杼(ひ)、つまり織物の経糸(たていと)の間を「往復」する道具です。
厳しすぎても、甘すぎても、「往復」は続きません。
バドミントンの本質は、決めることでも、決められることでもなく、永遠に続く往復、すなわち「力を合わせること」に他なりません。
答えは、初めから私たちの目の前にあったのです。
さあ、力を合わせて上達しようぜ!