格言:「気持ちを切り替えろ」は思考停止の呪文。成長は「どうすれば?」という“問い”から始まる。

2025年8月19日オンライン教室レポート

森の中の分かれ道―思考の転換と具体的な次の一歩を象徴する風景

「気持ちを切り替えろ!」その一言が、思考を止める。

ミスをした選手に、指導者がかける言葉。「気持ちを切り替えろ!」「次、集中!」。ベンチやコートサイドで、私たちはこの言葉を何度耳にしてきたでしょうか。

それはまるで、選手を鼓舞する魔法の言葉のように聞こえます。しかし、私たちは一度立ち止まって考える必要があります。この言葉は本当に選手の成長に繋がっているのでしょうか?

むしろ、それは具体的な解決策から目を背けさせ、思考を停止させるための、都合の良い「呪文」になってはいないでしょうか。この記事では、その言葉の裏に潜む危険性と、選手と指導者が共に成長するための、より建設的なアプローチを探ります。

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なぜ「切り替えろ」は“価値のないアドバイス”なのか?

結論から言えば、「気持ちを切り替えろ」という指示は、「下手な選手に上手くなれ!」と願っているのに等しいのです。そこには、目標を達成するための具体的な方法論が一切含まれていません。

思考停止を招く精神論

この言葉は、ミスの原因分析や次の具体的なアクションプランの策定といった、最も重要な思考プロセスを省略させてしまいます。「気持ち」という曖昧なものに責任を転嫁し、指導者も選手も「やるべきことは言った・聞いた」という安心感に浸ってしまうのです。これは、成長の機会を自ら放棄する行為に他なりません。

指導者の責任放棄

選手がミスをするのには、技術的な問題、戦術的な判断ミス、あるいは精神的なプレッシャーなど、必ず具体的な原因があります。その原因を突き止め、解決策を提示するのが指導者の役割です。「気持ち」の一言で片付けてしまうのは、指導者自身の分析不足や言語化能力の欠如を棚に上げていると言っても過言ではないでしょう。

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成長の起爆剤となる魔法の質問:「で、どうすれば?」

では、どうすればこの思考停止のループから抜け出せるのでしょうか。答えは非常にシンプルです。選手が指導者に、たった一言問い返すのです。

「気持ちを切り替えるために、具体的に何をすれば良いですか?」

この質問は、空虚な精神論から具体的な行動計画へと議論のステージを強制的に引き上げます。指導者は、抽象的な言葉で逃げることができなくなり、選手と共に「次のプレー」をデザインせざるを得なくなります。

例えば、バドミントンでスマッシュをネットにかけた選手に対して、

  • 悪い例:「ドンマイ!気持ち切り替えていこう!」
  • 良い例:「今のは打点が少し低かったな。次はシャトルの下にもう一歩深く入って、高い位置で打つことを意識してみようか。」

このように、「どうすれば?」という問いは、指導者を考えさせ、その思考のプロセスが選手の具体的なパフォーマンス改善に直結します。そして、指導者自身も、より的確なアドバイスをするための分析力と表現力を磨くことになり、結果として指導者自身の成長にも繋がるのです。

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まとめ:思考停止から脱却し、共に成長する道へ

「気持ちを切り替える」ことは確かに重要です。しかし、それは結果であって、方法ではありません。大切なのは、「どうすれば」気持ちを切り替え、次の成功に繋げられるのか、その具体的な道筋を選手と指導者が共有することです。

選手は、受け身のアドバイスを待つのではなく、勇気を持って「どうすれば?」と問いかけてみましょう。指導者は、安易な精神論に逃げることなく、選手の問いに真摯に向き合い、具体的な戦略を共に練り上げましょう。

その対話の先にこそ、本当の意味での「切り替え」があり、選手と指導者が共に成長していく未来が待っています。

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