2025年8月23日オンライン教室レポート:固執は停滞、探求は進化―ヘレン・ケラーに学ぶ「見る力」
DATE: 2025年8月23日
1. Opening: あなたは本当に「見えて」いるか?ヘレン・ケラーが問う“当たり前”への感謝
現代社会は、数百年前の大名よりもはるかに豊かで便利な生活を私たちに与えてくれました。しかし、幸福度調査では、人々の「幸せ」は横ばいのまま。なぜ私たちは、これほど恵まれているのに幸せを感じにくいのでしょうか?
今回のオンライン教室は、そんな根源的な問いから始まりました。コーチが提示したのは、ヘレン・ケラーの著書『もし三日間、目が見えたなら』。見ること、聞くこと、感じること。私たちが「当たり前」として受け流している日常の中にこそ、成長と幸福の鍵が隠されているのかもしれません。
【中島コーチ】(15:41)
すごい便利になってると思いますよ。世の中ってね。考えてみたら昔の大名の暮らしよりはるかに豊かですよね。…なのに現代人めちゃくちゃもう大名よりすごい暮らししてんですよ。なのに全然幸せじゃないっていう。
【中島コーチ】(20:27)
(友人が森を歩いた感想を聞いて)ヘレンがびっくりしたんだよね。え、あんだけ森の中を歩いてきて何も見えてないの?って。どれだけ人間ってね、目が見える人達って何も見えてないかっていうのをね、分かった。…明日突然目が見えなくなると思って世界を見てください。明日耳が聞こえなくなるかのように音楽を聞いてください。
また、コーチは「予期待機理論」を紹介。ディズニーランドへ行く当日よりも、行くまでのワクワクする期間の方がドーパミンが多く分泌されるというのです。これを応用し、練習や試合といった楽しみを「ご褒美」として設定することで、それまでの仕事や勉強の質すらも向上させられる、という目からウロコの発想が語られました。
今日のKey takeaway
もし明日、目が見えなくなるとしたら、あなたは何を見ますか?その切実な視点こそが、日常と練習の質を劇的に変える。「当たり前」を「奇跡」として捉え直す感謝のレンズを通して、世界を見つめ直してみましょう。
2. Deep Dive: 「固執は停滞、探求は進化」―本物の指導者を見抜く視点
「昨日と言っていることが違うじゃないか!」選手や保護者からのそんな言葉を恐れ、30年前と同じ指導を続けている指導者が少なくありません。しかし、コーチは断言します。「固執は停滞、探求は進化」であると。
Windows 2000の使い方を2025年に教えても意味がないように、バドミントンの理論や技術も日々進化しています。自らの不完全さを認め、常に新しい知識や方法を探し求める姿勢こそが、選手を未来へ導く指導者の絶対条件なのです。
【中島コーチ】(11:45)
指導者が言うことを変えると選手とか親御さんから文句が出る時あるんですよ。一貫性が保たれてないみたいなね。…なので30年前から同じこと言ってる指導者って非常に多いんじゃないかな。もう使い物になんないぞってことですよね。
【中島コーチ】(12:54)
教える側も変化してかないと教えられないわけです。…私が考える、どういう指導者が本物かって言うと、探求し続ける指導者がやっぱり本物なんじゃないかなと。今完璧な指導を持ってる人なんてね、世界中どこを探してもないわけですよ。
自分の立場やプライドを守るために変化を拒む指導者は、結果として選手の成長という最も大切な目的を見失ってしまいます。私たちは、常に学び、変わり続ける「探求者」であるべきなのです。
3. Mystery: なぜ「ミスしても困らない」とミスが減らないのか?
「ミスしてもいいよ」と言われる環境なのに、なぜか一向にミスが減らない。この謎について、コーチは鋭く切り込みました。その原因は、ミスに対する「本当の困りごと」が自分の中にないからです。
例えば、ミスをしたら殴る蹴るの暴行を加えるスパルタ式の指導なら、選手は「困る」ので必死にミスを減らそうとします。しかし、それはPhoenix-Aichiが目指す姿ではありません。では、どうすればいいのか?
【中島コーチ】(53:45)
ミスしたら何があるから困るっていうね、1段階繋ぐものがないと困らないよね。ただ単にミスしましたね。ネットにかけました。何が困るんだっけっていうね。
【参加者アキコ】(56:11付近のコーチの解説より再構成)
(ミスをすると)「弱いと思われたくない」とか、「勝ちたいのに負けてしまう」ということが、私にとっての本当の困りごとなのかもしれない…。
「追い込まれると何が困る?」「相手が楽になると何が困る?」こうした問いを通じて、自分の内面を深く掘り下げることが不可欠です。「弱いと思われたくない」「勝ちたい」といった、自分自身の根源的な動機とミスを結びつけない限り、本当の意味で行動は変わらないのです。
4. Video Analysis: 上級者と停滞する人の決定的な差
今回の動画分析では、対照的な2つのプレーが紹介されました。ひとつは、ミスをしても無表情で、楽しんでいるかさえ疑問に思える80代のプレー。もうひとつは、卓越した戦術眼を持つ女子選手のプレーです。
「下がれる」のに「下がらない」勇気
特に注目すべきは、後者の女子選手。彼女は、Phoenix-Aichiの多くの選手よりも速く下がれる能力があるにも関わらず、意図的に前にポジションを取ります。これは、単に「前にいなさい」という教えを守っているのではなく、「前にいる方が有利だ」と判断しているからこその戦略的な選択です。
【中島コーチ】(30:03)
(80代のプレーを見て)もうなんかミスしても静かなんですよね。すごいミスして静か。…これ本当楽しいのかっていうことになってきますね。
【中島コーチ】(36:31)
あの、この人の方が全然下がれるんですよ。フェニックスのみんなよりも下がれると思うんですけどね。下がれるのに前にいますからね。下がらないっていうね。下がれるのに下がらない。だからパートナーがやりやすい。
上達する選手は、教えられたことを鵜呑みにするのではなく、その意図を理解し、自分の判断でプレーを選択しています。その差が、ラリーの質、そして勝敗に直結しているのです。
5. AI Talk: 三流ミュージシャンとAIの対話に学ぶ「成長を阻む思考」
教室のユニークな一幕として、コーチがAI(ChatGPT)と「三流ミュージシャンが言いそうなこと」について対話した様子が紹介されました。これは単なるお遊びではなく、私たちの成長を妨げる「思い込み」や「言い訳」を客観視するための巧妙な仕掛けです。
【参加者トオル】(46:45付近のコーチの解説より)
「正直売れたら俺の音楽じゃなくなる気がするんだよね」…いかにも言いそうですね(笑)。
【中島コーチ】(47:58)
(AIの返答を見て)「本人は芯がぶれないアーティストを気取ってるけど、実際には売れる音を作るチャンスすら来てない可能性が高い」っていうね。ツッコミが入ると。
「世間に合わせたら俺じゃなくなる」「やる気がないじゃない。やりたいことが見つかってないだけ」こうした言葉は、一見すると信念があるように聞こえますが、実際は変化を恐れる自己防衛に過ぎないかもしれません。このような「三流の思考」をユーモアを持って笑い飛ばすことで、私たちはより素直に成長への道筋を歩むことができるのです。
コーチとAIの対話(プロンプト例)
指示の一部(想像):
- 休憩を兼ねて「三流ミュージシャンが言いそうな言葉」をブレストしよう。ユーモアを忘れずに。
- 私「ロスの音は乾いてるよね」→これについて三流ミュージシャンっぽく分析とツッコミを返して。
- 同じ系統で「三流バドミントンプレーヤーが言いそうなこと」も考えてみよう。「君、いい筋してるよね」とか。
- これらの対話を通じて、成長を妨げる思考パターンを浮き彫りにすることが目的だ。
6. Takeaways: コーチング的5つの学び
今回の教室は、バドミントンの技術論を超え、私たちの生き方や成長に対する姿勢そのものを問う、深い学びの連続でした。特に重要な5つのポイントを振り返ります。
感謝のレンズで世界を見よ
ヘレン・ケラーのように、当たり前の「見える」「聞こえる」に心から感謝することで、世界の解像度は劇的に上がる。その視点が練習の質を高める。
「期待」をエネルギーに変えよ
未来の楽しみ(練習、試合、食事)を意識することで、現在のタスクの質と幸福度が向上する。「良き待機理論」を日常に取り入れよう。
探求し続ける者であれ
最高の指導も練習法も常に更新される。昨日より今日、今日より明日。「もっと良い方法はないか?」と問い続ける姿勢が停滞を防ぎ、進化を生む。
「なぜ」を5回掘り下げよ
「ミスしたくない」のはなぜ?その根本原因(例:弱いと思われたくない)を自覚しない限り、行動は変わらない。表面的な感情の奥にある本当の動機を見つけ出す。
三流の思考を笑い飛ばせ
「自分は特別だ」というような独りよがりな思考や言い訳を客観視し、ユーモアを持って手放すことで、一流への道が開ける。
【中島コーチ】(26:29)
(1日の最後に)楽しみなことをやって寝るっていうサイクルを送ってる人にとって、楽しみなことが後にあるんだと思って仕事をする人と、「ああ、めんどくせえな」って言って仕事して終わった後ゲームやろうっていう人で、全然脳の状態違うよってことなんですよね。これすごくない?
7. Action: 「見る力」を鍛える実践チェックリスト
学びは行動に移してこそ意味があります。今日からできる具体的なアクションで、「見る力」と「考える力」を鍛え、成長を加速させましょう。
アウトプット習慣チェックリスト
8. Closing: 今日の学びを明日の一歩へ
「明日、目が見えなくなると思って世界を見る」。ヘレン・ケラーのこの言葉は、私たちに強烈なメッセージを投げかけます。失って初めて気づく価値を、私たちは日々見過ごしてはいないでしょうか。
固執を捨てて探求を選び、当たり前に感謝し、未来への期待を力に変える。これらの思考の転換は、コート上のパフォーマンスだけでなく、人生そのものを豊かにしてくれるはずです。今日の学びが、皆さんの明日をより輝かせるための一歩となることを願っています。
【中島コーチ】(1:18:20)
ありがとうございました。
【参加者】(1:18:20)
ありがとうございました。
さあ、まずはチェックリストの一つからでも実践してみてください。その小さな行動が、あなたの「見る力」を鍛え、新しい景色を見せてくれるはずです。