なぜ、あなたは「様子見」してしまうのか? 成長を阻む5つの壁と、沈みゆく時代を生き抜く生存戦略
DATE: 2025年8月13日
1. Opening: 権利を主張するな、貢献せよ。そして「様子見」の謎に迫る
この日のオンライン教室は、前回の「権利を主張するな、貢献せよ」という強烈なテーマの振り返りから始まりました。子育てすらも「自分が育てたい」という自己中心的な欲求であるという厳しい指摘。そして、光市母子殺害事件や『進撃の巨人』を例に、誰もが持つ「人間の愚かさ」と向き合うことの重要性が語られました。
コメントもせず、ただ聞いているだけの姿勢は、やりたいこと(楽をしたい、時間をかけたくない)を優先している点で、事件の犯人と本質的に変わらないのではないか──。コーチの鋭い問いかけが、教室の空気を引き締めます。
【中島コーチ】(03:45)
努力のベクトルを権利の主張から貢献への意思に変えていきましょう。それから、子育ては美徳ではありませんよと。(中略)自分が育てたいっていう自己中心的な欲求を押し付けてる行為ですよという話をさせてもらいました。
【中島コーチ】(07:01)
光市母子殺害事件の犯人と自分は違うと思いたいでしょうけど、根本的に言ったら、変わんないよねっ。とんでもない事件だけどやってることを抽象化してみたら変わらない。問いかけに答えるべきと思っても、他のやりたいことを優先するのと同じ。やりたいことをやっているだけ。俺は違うぞ、光市母子殺害事件の犯人のような人間ではございませんって思ってないですか?
そして議論は、今日のメインテーマ「なぜ人は“様子見”してしまうのか?」へと移ります。コミュニティの中で発言せず、行動せず、ただ状況を静観する。その心理の奥底には、一体何が隠されているのでしょうか。この「様子見」という行動こそ、多くの人の成長を妨げる根源的な問題なのかもしれません。
今日のKey takeaway
「様子見」は、無関心と自己保身が織りなす思考の罠。 対人競技において「人」への興味を失い、自分のリスクだけを回避しようとする姿勢は、成長の機会を自ら放棄するに等しい。この構造を理解し、小さな行動で貢献し始めることが、停滞を打ち破る第一歩となる。
2. Mystery: あなたの成長を阻む「様子見」の5つの原因
なぜ私たちは、積極的に関わることを避け、「様子見」という安全地帯に留まってしまうのでしょうか。教室では、その原因が5つのカテゴリーに分類され、徹底的に分析されました。あなたにも当てはまるものがあるかもしれません。
様子見を生む5つの心理的壁
- 八方美人的思考:コーチよりも他のメンバーとの関係を優先し、嫌われることを恐れて発言を控える。「コーチに媚びている」と思われたくない心理が、行動を縛る。
- コスパ・お客様意識:最小限の労力で上達したいというコスパ思考と、「教えてもらうのが当たり前」というお客様意識。意見を言うことを「損」と捉え、情報だけを得ようとする。
- 活動・指導者への不信感:活動自体の価値や、コーチを全面的に信頼していない状態。練習さえできれば良いと考え、人間研究のようなテーマに価値を感じない。
- 人間研究への抵抗感:人の心理を探求すること自体への無意識の抵抗。「面倒なやつ」と思われたくない、他者に興味がない、という根源的な問題。
- 真面目勢の葛藤:コーチに嫌われまいと「正解」を当てに行こうとする姿勢。自分の意見ではなく、コーチが望むであろう回答を探すため、議論が深まらず疲弊してしまう。
【中島コーチ】(13:00)
積極的に回答してしまうと他のメンバーからコーチに気に入られに行ってるっていうね、に捉えられるんじゃないかということを恐れて発言を控える。よくあるのは個人チャット。私に対してワンオンワンで会話する時には媚びた発言が出るんですよね。
【中島コーチ】(19:16)
お金を払ってるんだから指導者が頑張るのは当然で自分は待っていれば良いという受け身の姿勢と、指導者の考えを自ら理解しに行こうとせず「理解させてみろこの野郎」ってことですよね。
コーチは、特に対人競技であるバドミントンにおいて、「人に興味がない」という姿勢が致命的であると指摘します。関心がないのに嫌われたくない、という自己矛盾した思考が、成長しない人々の共通点であると、厳しくも的確に分析されました。
3. Deep Dive: 沈みゆく船から脱出せよ!宮台真司に学ぶ生存戦略
議論は個人の内面から社会全体へとスケールアップします。コーチは社会学者・宮台真司氏の議論を引用し、現代日本が置かれた厳しい状況と、私たちがとるべき生存戦略を提示しました。
現代社会は、国やグローバル経済といった巨大な「システム」が、私たちの家族や地域コミュニティといった「生活世界」を侵食している状態です。多くの人がこの「沈みゆく船(=国、社会)」の中で、少しでも良い席を取ろうと競争していますが、コーチはその競争自体が無意味だと断言します。
【中島コーチ】(37:21)
多くの人が勝ち組を目指していたと思うんですよ。昔で言ったらね。これって言ってみれば沈みゆく船の中で少しでも良い座席を確保しようっていうような行動。(中略)本当にすべきなのは座席争いじゃなくて信頼できる仲間と共に自らの手で小さなボートを作り船から脱出することですよね。
【中島コーチ】(38:39)
重要なのは良い席を争うことじゃなくて信頼できる仲間。誰が信頼できるんだ?本質的な話をし続けてる人は誰なんだってね。様子見せずに言ってるのは誰なんだ、いうことですよ。どういう人が信頼できるかっていうのもね、LINEグループを見てたら分かってくるじゃないですか。
本当にすべきなのは、座席争いではありません。信頼できる仲間を見極め、共に小さなボートを作り、沈みゆく船から脱出すること。それは、顔の見える関係性の中で助け合う「共同体」を自ら作っていく生き方です。「様子見」をしていては、仲間も見つからず、一緒に沈んでいくだけなのです。
4. Video Analysis: 打ち方の安定はラケットヘッドに宿る
人間研究や社会システム論といった深い議論の後、話題は具体的なバドミントンの技術練習へ。この日のテーマは「ショットの安定性」。特に、ラケットヘッドの動きに焦点が当てられました。
多くのプレイヤーがネットミスをしたり、ボールがばらついたりする原因の一つに、インパクトの瞬間にラケットヘッドが下を向いてしまうことが挙げられます。コーチは、ラケットヘッドが下を向く時間を極力なくし、横を向いたまま振る意識を実演しました。
【中島コーチ】(54:36)
今日見ましたけどもラケットヘッドが、下をなるべく向かないように打ってください。これ下向いてないですよね。ラケットが下を向くタイミングないように振ってみてください。これでネットにかかりにくくなる。
【アキコ】(01:10:31)
うん。でもなんか打ち方あってます、これ?
【中島コーチ】(01:10:36)
合ってます。ま、俺の方が持ち上げてる感じはある。まあまあでも、別にネットに引っかかんなかったらいいんだよ。俺は結構ネット引っかかんの恐れるから上に持ち上げたいんだ。
さらに、低い打点からでも攻撃的な軌道で返す「リバースショット」の練習も行われました。通常通りロビングを上げると山なりのボールになりがちですが、リバースで打つことで、初速が速く直線的な弾道になり、相手の時間を奪うことができます。人間を理解することも、効率的な打ち方を科学することも、全ては「勝つ」ための総合力。その両輪を回し続けることの重要性が示された練習でした。
5. Takeaways: コーチング的5つの学び
今回の教室は、「様子見」という個人の内面的な問題から、社会システムという大きなテーマ、そして具体的なバドミントン技術まで、非常に多岐にわたる内容でした。その中から、明日からの行動を変える5つの学びを抽出します。
「様子見」の正体を自覚する
自分がなぜ発言・行動しないのか。それは「嫌われたくない」からか、「コスパが悪い」と感じるからか。自分の「様子見」のタイプを自覚することが、変化の第一歩となる。
沈む船から「小さなボート」を作る覚悟を持つ
国や会社という大きなシステムに依存する時代は終わった。本当に信頼できる仲間は誰かを見極め、自らの手で助け合える共同体(ボート)を作るという視点を持つ。
人に興味を持つことが最強の戦略
対人競技の根幹は「人間研究」。相手を知り、仲間を知り、そして自分を知ること。無関心を装うのをやめ、積極的に人に問い、関わっていく姿勢が成長を加速させる。
立派な人(リスペクタブル)であれ
地位や学歴ではなく、仲間から人として尊敬される存在を目指す。コスパや要領の良さで得られる信頼は脆い。貢献する姿勢、誠実なあり方が問われる。
技術は思考の現れ。動きを科学する
ショットの安定性は、ラケットヘッドの動きという物理的な現象に起因する。感情論や根性論ではなく、なぜそうなるのかを科学的に捉え、再現性を高める努力を怠らない。
【中島コーチ】(29:41)
私の本質的な価値これですよ。ダメ人間のダメな考え方を学べる。どういうダメな考えをするのかを知れる。どういうことに陥ってるのかっていうことを研究できる場だと思っています。これが本質的な価値。(中略)ダメなやつがダメになる理由って再現しますから。
6. Action: 「様子見」脱出&アウトプット習慣チェックリスト
学びを行動に変え、習慣化してこそ、本当の成長が始まります。今日の学びを自分の中に定着させ、「様子見」から抜け出すための具体的なアクションリストです。一つでもいい、今日からチェックを入れてみましょう。
アウトプット習慣チェックリスト
7. Closing: 小さなボートを漕ぎ出す、はじめの一歩
「様子見」の正体を知り、その裏にある自己保身やコスパ思想と向き合う。そして、沈みゆく巨大な船に安住するのではなく、信頼できる仲間と共に自らの手で小さなボートを漕ぎ出す覚悟を持つこと。
今回の教室は、バドミントンの上達法という枠を遥かに超え、不確実な時代を生き抜くための哲学そのものを問う時間となりました。「人に興味がない」「なるべく労力をかけたくない」…そんな思考が、いかに自分の可能性を狭め、成長を停滞させているか。多くの参加者が、その事実に気づかされたのではないでしょうか。
【中島コーチ】(48:10)
自分だけが安全な位置からね、なるべく安全。その成れの果てが様子見ですよね。なるべく危険なパイは取りません。だけど上達したいんです。全然違いますよね。もう本当にそう思いませんか?
【アキコ】
技術練習も、人間研究も、全部繋がっているんですね。今日の練習、すごく楽しかったです。ありがとうございました。
あなたのボートのオールは、あなた自身の手の中にあります。今日、チェックリストに一つチェックを入れること。グループで一言発言すること。それが、未来という大海原へ漕ぎ出す、力強いはじめの一歩になるはずです。次回のオンライン教室も、皆さんの挑戦をお待ちしています。